第659回収録【トランプ関税のヤバさ…】世界恐慌の引き金か?ドル不足が招く恐ろしい現実とは

国内車産業13兆円に打撃 米追加関税25%、来月3日発動

部品も対象 輸出減で空洞化懸念

2025/3/28付

日本経済新聞 朝刊

トランプ米大統領は26日、輸入自動車に25%の追加関税を課すと発表した。日本からの輸入車も対象になる。日本の対米輸出総額の3割弱を占める自動車産業への影響は避けられない。輸出の減少に伴って国内生産が減ると、最大で13兆円の経済価値が打撃を受ける可能性がある。(関連記事総合2、政治・外交面に

追加関税が発動されれば、自動車を基幹産業とする日本経済への影響は大きい。米国向け自動車輸出額は2024年に約6兆円だった。日本自動車工業会(自工会)によると、24年の国内自動車生産は823万台。日本から米国への自動車輸出は24年に137万台近くあり、国別では最大だ。

日本経済新聞は専門家の助言を得て、対米自動車輸出が減少した場合の経済影響を試算した。24年の実績をベースに総務省の産業連関表を用いた。

対米の自動車輸出がゼロになり国内生産が減少すると13兆円の経済価値が吹き飛ぶ。単純な比較は難しいものの、24年の訪日外国人消費額の1.6倍に相当し、名目GDP(国内総生産)の2%強にあたる。計算上は対米輸出と生産が10%落ち込むと1兆3000億円の影響がある。

鉄鋼や流通など関連産業にも波及する。自動車産業は裾野が広く、二輪を含む国内の製造部門の就業人口は88万人を超える。運送や販売といった関連部門を加えると558万人にのぼる。

追加関税は米東部時間4月3日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)から適用される。米国は乗用車に2.5%、トラックに25%の関税をかけている。25%を上乗せすれば乗用車の関税は27.5%、トラックは50%となる。

5月3日までにエンジンやトランスミッション(変速機)のような基幹部品にも25%の追加関税をかける。新たな関税により年1000億ドル(約15兆円)以上の税収を見込む。

トランプ政権は追加関税をテコに生産拠点を米国内に呼び込む考えだ。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)で現在関税がゼロになっている自動車には軽減措置を設ける。米国製の部品をどれだけ使っているかに応じて負担額を調整し、米国内への生産移管を促す。

4月2日には貿易相手国と同水準まで関税率を引き上げる「相互関税」の詳細を発表する予定だ。トランプ氏は26日「我が国から雇用や富、多くの物を奪った国々に代償を請求するつもりだ。率直に言って敵より友の方がはるかにひどいことも多かった」と主張し、同盟国に厳しい視線を向けた。

林芳正官房長官は27日の記者会見で「極めて遺憾だ」と述べ、日本の適用除外を申し入れたと明らかにした。欧州連合(EU)の欧州委員会の報道官は27日、強力な対抗措置を検討していると表明した。ロイター通信によるとカナダのカーニー首相も26日、報復措置に言及した。

中国外務省の郭嘉昆副報道局長は27日の記者会見で「関税戦争に勝者はなく、追加関税によって国家の発展や繁栄は実現できない」と強調した。

トランプ氏は27日、自らのSNSで「EUがカナダと協力して米国に経済的損害を与えようとするなら、現在の計画よりはるかに大規模な関税が両者に課されることになる」と警告した。

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