世界中の中央銀行の
元締めみたいな銀行があります。
それが、
・BIS(国際決済銀行)
です。
中央銀行の中央銀行とも呼ばれています。
つまり、日銀やアメリカのFRBよりも、
断然に格上の存在です。
そんなBISですが、トップの人物が、
日経に相当な長文記事を掲載してきました。
そして、これこそが、
「今後はこういう流れで行きますよ」
というプロレス団体の方針
そのものだというのです。
今回は、その記事の解説になります。
日銀も逆らえないような存在からの、
一種の警告みたいなものです。
世界金融を、これから
どう動かしていく予定なのか?
インフレは?利上げは?引き締めは?
そのスケジュールが公開されています。
動画概要(21分36秒)
・世界中の中央銀行を束ねる人物
・BISのトップからの所信表明
・インフレとは闘い続ける
・自由貿易という謳い文句で関税アップ
・銀行規制の抜け穴を封じ込め
・今後はガンガンに金融引き締め
・金融政策ではなく構造改革させます
・日銀も標的
・効率的な医療システムを推進
・インフレ率2%までは徹底的に利上げ
・日銀の誤魔化しはいつバレるのか?
・クレディ スイス買収事件
・中堅銀行への規制を厳しく?
・CDSなどの複雑な金融商品は廃止の方向?!
・全ての銀行は完全なるBISの傘下に
・未上場ファンドにも規制
・CBDCの技術開発はBISが主導
・中央銀行が仮想通貨の主導権を握る?!
・ドルとBRICs通貨について
・「BIS年次報告書」は一見の価値あり
・将来の通貨システムの青写真とは?
・経済を潰してでも次のフェーズに
・まさにグレートリセットです
…etc
音声ダウンロード(MP3) [7月13日収録]
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財政金融頼み、もう限界 国際決済銀行トップに聞く
2023/7/8 5:00
日本経済新聞 電子版
BIS(国際決済銀行)は「中央銀行の中央銀行」とも呼ばれる=ロイター
【この記事のポイント】
・目標に達するまで油断せず、インフレと闘い続ける必要
・保護主義や関税引き下げが経済の効率を壊した
・米欧の銀行規制に抜け穴、監督当局に必要な人材足りず
新型コロナウイルス禍後の金融・財政面の大規模刺激策とウクライナ危機後のエネルギー価格の高騰などで、世界でインフレが加速した。なぜ中央銀行は後手に回ったのか。米欧の銀行不安は収束したのか。世界の中央銀行がメンバーとなり、協力を推進する国際決済銀行(BIS)のトップであるアグスティン・カルステンス総支配人に聞いた。
各国の財政・金融政策はコロナ禍に伴う恐慌を警戒するあまり、拡張を続け過ぎた。「中央銀行の中央銀行」としてBISは警鐘を鳴らしたが、歯止めをかけられなかった。
――欧米の中央銀行はどこで間違ったのか。
「それは少し過去に遡って答える必要がある。何十年もの間、新興国を含む世界の中央銀行はインフレをコントロールすることに成功した。グローバル化による経済開放、バリューチェーンの効率向上が、需要増に対応して供給を機敏に増やすことを可能にした」
「これが(08年の)世界金融危機後の10年間、中央銀行が積極的な金融緩和策をとることに安心感を与えたのは間違いないが、コロナ禍とウクライナ戦争で一変した」
「物価は中央銀行が100%決定するものではなく、多くの原因がある。まずコロナ禍では感染症対策として初めてロックダウン(都市封鎖)が使われた。大恐慌に陥る恐れがあり、各国の財政・金融政策は極めて拡張的になった」
「コロナワクチンが開発され世界経済がとても早く回復したのは良かったが、すでに景気刺激策が実行に移されていた。ロシアのウクライナ侵攻も起き、サプライチェーンや商品市場の混乱を招き、金融緩和もあいまってインフレが高進してしまった」
――世界は物価と金利が安定するグレートモデレーション(大いなる安定)から、構造的なインフレ期に移行したのか。
「2%を下回るような超低インフレ期に戻る可能性は低い。需要を刺激するほどインフレに与える影響は大きくなっており、中央銀行はそれを考慮しなければならない」
「金融政策も財政政策もできることの限界に近づいている。インフレが進行している現状では、金融政策で経済を刺激する手段はあまりない」
「一段の成長には政府が供給政策、つまり構造改革に集中し、経済をより生産的で効率的に持続可能な成長をできるようにすることが重要だ。潜在的な成長力は財政・金融政策ではなく経済構造による。そのような議論に移る必要がある」
保護主義が効率を壊した
――どのような構造改革が必要なのか。
「各国の状況によるが、多くの国々で労働市場にもっと(働き手の移動など)柔軟性が必要だ。特に日本のような国は人口動態で非常に特殊な問題を抱えている。コロナ禍の経験もふまえて、効率的な医療システムを構築することも必要だ」
「ここ数年、保護主義や関税引き上げ、貿易制限の強化が相次いでおり、それは結局、経済の効率に影響を及ぼす。市場によっては競争を強化することも必要だ。多くの国では住宅市場に価格上昇圧力がかかっている。構造的な問題があり、建設規制の改革が進めば緩和されるだろう」
――主要中央銀行が採用する2%のインフレ目標を実態に沿い引き上げるべきとの意見もある。
「2%は適切な目標で、それを引き上げると中央銀行の信頼性が損なわれる。金融政策が物価に影響を及ぼすにはタイムラグがある。今後数カ月は、物価上昇率が鈍化すると予想され、多くの中央銀行は必要なら行動する約束をしている。今後1年半のどこかの時点で目標を達成すると思う」
「インフレ率を2%まで下げるには中央銀行は粘り強く取り組む必要がある。現段階で最も重要なのは油断しないことだ。(目標を達するまでの)ラストワンマイルまでインフレと闘い続けるということだ」
銀行監督は人員足りず
3月以降、シリコンバレーバンクなど米国の中堅銀行が経営破綻し、スイス大手銀のクレディ・スイス・グループはUBSに救済買収された。銀行規制の抜け穴も露呈した。
――米欧の金融不安は一服したが、金融システムは引き続き心配すべき状況なのか。BISにあるバーゼル銀行監督委員会は銀行の自己資本規制などを定めているが、規制・監督が十分ではなかったのではないか。
「米国やスイスの出来事は特異だ。米国の場合、強い規制が適用されていなかった中堅銀行で事件が起こった。それぞれのビジネスモデルやリスク管理にも欠陥があったとみている」
「クレディ・スイスは破綻直前も(金融機関の健全性を保つ)バーゼル規制は満たしていた。問題は、長期にわたり適切なビジネスモデルを欠いていたことだ」
「とはいえ、今の規制に問題がないのか見極める必要はある。特にオンラインバンキングが普及してきたことで、預金が従来より移動しやすくなっている問題は検討していくべきだ。深い分析を要するが、必要なら規制の枠組みを見直す用意はある」
――そのような金融機関のビジネスモデルの失敗を各国当局の監督で防ぐことはできないのか。
「金融監督は、つまるところ当局と金融機関との自然な対話を伴うものだ。もし弱点があるのなら、当局は銀行の経営陣や取締役会に質問する権限を持つべきだ。ただ、監督当局には必要な人員がいないことが多い。(どのような対応策が必要なのか)今後検討すべき分野だ」
BISが主導する各国の金融機関の監督では、影響力を増しているノンバンクに対する監視強化やデジタル通貨のような新たな領域への対応が必要になると考えている。
――非上場企業の株式を主な投資対象とするプライベートエクイティ(PE)ファンドなどノンバンクの規模が拡大し、市場に大きな影響力を持っている。
「世界金融危機の後、リスクテイクの一部がノンバンクに移行した。ノンバンクは銀行に比べて監督や規制が緩い傾向にあり、リスクをとる量も増えている。これが金利上昇局面ではより大きなリスクになる」
「ノンバンクで何が起きているのか。より実質的な規制が必要なのかという観点を持って、金融当局が関与していくべきだと思う」
――BISは中央銀行が電子的に発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究を主導している。普及に向けた見通しや課題は何か。
「BISでは、CBDCに適用できる技術開発を主導している。CBDCには様々な選択肢があるだろう。私は(消費者向けの)リテール型より、(法人などの大口取引に使われる)ホールセール型の可能性が高いとみているが、それは各国が決める問題だ」
「CBDCの研究においては、将来の金融システムをより効率的に機能させ、金融市場を改善するためにどう貢献するかを考慮する必要がある」
「中央銀行が主導権を握らなければ、暗号資産(仮想通貨)のように、他の銀行や金融事業者が主導権を握ることになるかもしれない。金融市場の革新につながるような野心的取り組みにおいては、中央銀行や金融当局が主導権を持つべきだと考えている」
――ウクライナ危機後に浮上した国際金融システムの分断リスクをどうみるか。
「確かに警戒する必要はあるが、今のところ大きく変わったことは起きていない。米ドルは依然として支配的通貨だ。我々は各国の中央銀行の外貨準備の管理を支援しているものの、ドルは弱体化していないとみている。地政学が世界経済の構造に影響を与えていく可能性はあるが、金融市場では今のところ目立った変化はみられない」
Augustin Carstens メキシコ出身、米シカゴ大で博士号取得。メキシコ中銀幹部として1990年代後半の通貨危機に対応。国際通貨基金(IMF)幹部、メキシコ財務相を経て2010年に中銀総裁。17年から初の新興国出身で現職。各国中央銀行の連携に自らの経験を生かす。
構造改革の必要性、日本も(インタビュアーから)
「極めて異例の時期だった」。高インフレを招いた中央銀行の責任への問いに、カルステンス氏もじくじたる思いがあったのだろう。オンラインのスクリーン越しで細かな表情は読みとれなかったが、未曾有の感染症やウクライナ危機など中央銀行がコントロールできなかった事態を長々と説明した。
第1次大戦後のドイツの賠償金支払事務のために1930年に創設された中央銀行の国際組織である国際決済銀行(BIS)。スイスのバーゼルに本部があり、日本では銀行の自己資本比率などを規制するバーゼル規制が有名だ。
BISは早くから低インフレ、低金利の長期化に伴うリスクを警告したが、多くの中央銀行は大規模緩和を継続し、結果としてインフレ退治で後手に回った。
今春、世界をヒヤッとさせた米欧の銀行危機についてカルステンス氏は「特異なケース」と指摘したが、金融のデジタル化に伴う預金の逃げ足の速さなど新たなリスクは気にかけている。
BISは最近発表した年次報告書でも財政・金融のマクロ経済政策への過度の依存に警鐘を鳴らした。成長力を高める構造改革が必要というカルステンス氏の指摘は、財政・金融で大盤振る舞いを続ける日本にもあてはまる。
(論説委員長 藤井彰夫)