日本政府が貿易自由化を急ぐ本当の理由

今年はTPP11と日欧EPA、
2つの大型の自由貿易協定
(メガFTA)に日本は合意しました。

日本政府は積極的に貿易自由化の
仕組みづくりに関わっていますが
『本当の理由』について横森が解説!

日本政府が貿易自由化を急ぐ本当の理由

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メガFTA 米中関与カギ

通商第4の時代、日本はTPP11主導

2017/12/15付 日本経済新聞 夕刊

 2017年もあと2週間あまり。今年はTPP11と日欧EPA、2つの大型の自由貿易協定(メガFTA)を合意した。関税が下がれば、海外の飲食料品が安くなり暮らしに恩恵がある。ビジネスのルールが整い、企業の海外展開も進む。日本の通商戦略の歴史を分類すると、17年は「第4の時代」を象徴する年だったと言えるかもしれない。

 「日本とEU(欧州連合)で自由で公正なルールに基づく経済圏をつくる。21世紀の国際社会の経済秩序のモデルとなる」。安倍晋三首相は8日、日欧経済連携協定(EPA)の妥結後に語った。

 日本は11月、米国を除く11カ国で環太平洋経済連携協定(TPP)の新協定「TPP11」を大筋合意したばかり。ともに19年の発効を目指す。「TPP、日欧EPAは成長戦略の切り札」と話す首相には満足な17年だったはずだ。

□   □

 日本の通商の歴史は4分類するとわかりやすい。

 まずは戦前、ブロック経済の時代だ。1929年の世界恐慌後、主要国は自国と植民地を中心に貿易を囲い込み、それ以外の国に高い関税をかけた。日本も旧満州(現中国東北部)や東南アジアと貿易圏をつくった。米英両国などの経済封鎖を受けて国際社会から孤立し、第2次世界大戦では敗戦国になった。

 次は20世紀後半の時期だ。第2次大戦後、米国などの自由主義陣営はブロック経済が戦争の一因になったと考え、1948年に関税貿易一般協定(GATT)を発足。日本も55年に参加した。「ラウンド」と呼ばれる交渉を重ね、全会一致で関税を引き下げていった。経済官庁幹部は「加工貿易国だった日本は、GATTでの関税引き下げの恩恵を受けてきた」と話す。

 記憶に新しいのは日本がコメの輸入を受け入れた94年のウルグアイ・ラウンド妥結だ。「開かれた国となるための陣痛の試練だ」。当時の細川護熙首相はこう理解を求めたが、農業団体は反発。政府は6兆円の農業対策を作った。与党議員は「貿易交渉に合わせて巨額対策をする歴史ができてしまった」と嘆く。

 GATTの役割は世界貿易機関(WTO)が引き継ぐ。冷戦終結後に中国など旧共産圏が参加し、参加国が100を大幅に超えると、合意形成が難しくなった。2001年からのドーハ・ラウンドは、いまだに決着していない。

 第3の時代は、こうしたGATT・WTO体制の行き詰まりから出てきた。多国間の全会一致では決まらない、と悟った主要国が90年代から次々と2国間の自由貿易協定(FTA)を始めると、日本は00年代に入ってようやく追随するようになる。初の2国間FTAは02年に発効したシンガポールとのEPAだった。

 「これまでWTOのルールに従い貿易をしてきた。しかし世界で地域的な協定が結ばれるケースが多くなった」。検討を本格化させたとき、当時の河野洋平外相は話した。それまで日本は「2国間FTAはWTOを阻害する」と主張していたためだ。

 05年のメキシコとのEPA発効後は、次々に2国間協定を結んだ。ところが潮流は10年代に入ると一変し、日本も巻き込まれていく。次は第4の時代、地域の複数国が結ぶメガFTAの世界だ。

 2国間協定では、企業は国別のルールに対応しなければならない。政府も2国間交渉を幾つもこなすことは面倒だ。内閣官房幹部は「主要国は2国間は非効率と考え、メガFTAに移った」と話す。米国はTPP、中国は日韓印や東南アジア諸国連合(ASEAN)との東アジア地域包括的経済連携(RCEP)。それぞれがメガFTAの構想を掲げると、日本もその渦に入っていった。

 10年には民主党の菅直人首相がTPPについて「関係国との協議を開始する」と表明。政権交代後の13年には安倍晋三首相が交渉参加を決め、15年には米国を含む12カ国で大筋合意にこぎ着けた。17年1月には米大統領に就任したトランプ氏が離脱を宣言したが、日本は残る11カ国での交渉をけん引し、TPP11として復活させた。

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 歴史を振り返ると、かつての貿易自由化は、米国などの「ガイアツ」で進んだ面がある。しかし第4の時代のいま、日本は自ら積極的に通商交渉を主導する役回りだ。茂木敏充経済財政・再生相も11月のTPP11合意の際に「日本が議論を主導した結果であり、日本の成長戦略にとっても大きな成果だ」と胸を張った。なぜだろう。

 政府関係者は「世界で2国間FTAやメガFTAが広がるなか、日本が主体的に取り組まなければ不利になる」と解説する。日本は貿易立国であるため、積極的に貿易自由化の仕組みづくりに関わった方がいい――という考え方だ。

 17年のTPP11と日欧EPAの合意は、メガFTAの流れに乗った日本には大きな成果かもしれない。とはいえ楽観はできない。世界の貿易額の1位、2位を争う米国と中国は、日本が参加するメガFTAの枠外だからだ。

 トランプ氏の持論はTPPを離脱して2国間協定を結ぶことだ。時代の歯車を巻き戻し、2国間FTAが咲き乱れる第3の時代に戻ると、日本はどうなるだろう。

 「米国が参加していたTPP12の時、日本は米国を除く10カ国と巧みに協力して米国と交渉していた」。TPPに関わった内閣官房の幹部はこう振り返る。「米国のような大国と2国間交渉をすれば厳しい条件を押しつけられてしまう。多国間で交渉することでバランスがとれる」(同)からだ。圧倒的な国力を持つ大国と1対1の交渉で対峙すれば、不公平な関税設定など「自由化」に逆行した結果も招く恐れもある。

 敗戦の経験を経て、貿易自由化の流れに乗り続けてきた日本。いまは受け身ではなく主体的に自由化を推進している。これからはTPPへの米国の復帰、RCEPの具体化と2大国の米中が関わるメガFTAづくりができるかどうかがカギだ。17年の2つの成功体験を生かし、第4の時代を続けられるだろうか。


 

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コメント

  • コメント (1)

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    • その1
    • 2017年 12月 25日

    ユダヤアメリカに押し切られているだけのことである。
    TPPがとおれば日本の貿易は壊滅的な影響を受けるだろう。

    日本の官僚たちも相当ユダヤアメリカに縛られているみたいだ。

    仮にユダヤアメリカ壊滅後はどうなるか?

    悪質な官僚たちの天国となるか、数少ない良識派の官僚と枝野ら立憲党が巻き返すか
    予断は許さない

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